縄文の時代から営まれてきた飛騨・高山の暮らしは、木を知り、漆を操り、土石を生活に活かす「技」として生きてきました。やがて「匠」と呼ばれ、その技は今日も継承され磨かれつづけています。『飛騨の工芸プロジェクト』は、現代の作家が、それぞれの解釈と、新たな美意識を提案します。
伝統工芸品は、私たちの生活を豊かにし、潤いをもたせてくれるかけがえのない先人たちの残してくれた宝です。飛騨地域にも、飛騨春慶や一位一刀彫などの伝統工芸品が多くの方に愛され、育まれながら作られてきました。そして飛騨地域の特色ある地場産業として、地域経済にも大きく寄与してきました。
しかし伝統工芸品業界をとりまく情勢は、需要の低迷と従事者の減少に歯止めがかからない状況にあります。全国の伝統工芸品も大変厳しい状況にありますが、和の文化とともに発展してきた伝統工芸品は、現代の多様な生活スタイルの需要に応えられない状況が続いており、これはデザイン性の問題だけではなく、ものに対する価値観や使い方の変化によって暮らしの道具としての需要と合わなくなっていることが大きな要因と考えています。
そこで飛騨地域地場産業振興センターは、飛騨の工芸の魅力を伝えるために、従来作られてこなかった新しい分野の商品開発を進めることになりました。
そして、新商品開発事業を計画する中、日本各地に残る伝統技術をコスチュームジュエリーデザインに活かす活動を行っているクリエイティブディレクターの加藤尚子さんと出会い、「飛騨の工芸プロジェクト」が生まれました。
伝統工芸品のある暮らしは、心を豊かにさせてくれます。それは、手づくりであることと、美しさにあると思います。「飛騨の工芸プロジェクト」は、職人の技を身近に感じることができ、日々身に付けられる装飾品の開発を行うことで新たな美意識を提案し、伝統を繋ぐことを目的に活動しています。
プロジェクトプロデューサー 打保幸泰